ロールモデルより「ロールパーツ」を探しませんか

あなたの目標となる「ロールモデル」を見つけましょう――。

キャリア開発をテーマにした記事や書籍で、よく目にすることが多いアドバイスの一つです。
ロールモデル、つまり、お手本となる人物を想定することができれば、
その人にように自分を成長させていくために、
どんなアクションを起こすべきかのイメージが明確になりやすい。
たしかにそうだと思います。
でも一方で、こんな反応がついて出る方も少なくないのではないでしょうか。

「ロールモデルが見つからない!」

自分にぴったりの理想形と思える人はなかなか見つからないなぁと、
私自身も感じてきました。

仮に「あの人、素敵でかっこいいな」と尊敬できる対象が見つかったとしても、
「でも、あの人は帰国子女だから」
「私とは違って、花形部署にいるし」と、“自分との違い探し”が始まって、
結局は「だから私はあの人のようにはなれない」という言い訳に帰着してしまう。
そんな本音を、研修の場でも多く伺ってきました。

そこで、私がすすめているのが
「ロールモデルではなくロールパーツ探し」という考え方です。

丸ごと一人の人物にお手本を求めるのはやめて、複数の人から“いいとこ取り”をするのです。「Aさんから学びたいのは、いつも謙虚な姿勢」
「Bさんから学びたいのは、ロジカルなプレゼン能力」
というふうに、理想のパーツをパッチワークのように集めて、
自分だけのオリジナルのモデル(人物像)を作ってみるのです。

研修の事前課題として「ロールパーツ探し」に取り組んでいただくと、
実に多彩なパーツが集まって盛り上がります。
パーツで探すメリットは、性別や職業など自分とはかけ離れた属性の人から
自由にパーツをピックアップできること。
社内の人に限らず社外の人でも、もちろんよし。
例えば、ある20代の女性は
「(ニュース解説者の)池上彰さんの勉強熱心なところは真似したい。
ワーク・ライフ・バランスに関しては、起業家の○○さんがお手本。
仕事の段取りは、同じ部署の△△先輩から学びたい」と、
見事にカラフルなモデルを作り上げていました。

「ロールパーツのいいとこ取り」をするメリットは、
発想がぐんと広がって、自分が求めるキャリアの方向性を発見できること。
自然と選びたくなるロールパーツの共通点から、
「私がなりたい姿のイメージが見えてきました」とおっしゃる方は、少なからずいます。
意識を広く外に向けてみることで、
自分の内なる希望や願いが刺激されて表に出てくる効果があるのだと思います。

関連して、こんな出来事もありました。
ある大企業の50代以上の役職者に向けた研修を担当したときのことです。
研修のテーマは「パワーアップ」。
一定のステージまで到達し、次なる目標を見出せずに能力を眠らせてしまっている
シニア社員の方々に、前向きに行動するためのアクションプランを
立ててもらおうというものでした。

「なんでもいいので、目標を書いてみましょう」
とお渡しした紙をじっと見つめたまま、手が動かない方が一人、二人……。
促してやっと書き出したかと思ったら、
「1年後に1キロ痩せる、2年後にさらに1キロ痩せる」
とダイエット目標でシートを埋めていくほど、
キャリアプランとして「なりたい姿」「実現したいこと」をまったく描けない方もいました。

そのとき、事務局が“あるもの”を配布した途端、
皆さんの目の色がみるみる変わっていったのです。
あるものとは、流行の商品・サービスやその開発者を紹介する、誰もが知る有名な雑誌。

ページをめくりながら、
「へぇ、最近はこんな面白い道具があるんだ。今度買ってみよう」
「話題のスポットに今度行ってみよう」
「開発者はベテラン社員なんだなぁ」など、
アンテナが外へ外へと広がっていく様子が見られて、
その後のセッションではより積極的な発言が増えました。
情報の力はすごい、と実感しました。

いつもよりも広く遠くへ、意識のアンテナを広げた先に、
「なりたい姿」のヒントは見つかるはず。ぜひトライしてみてください。
 

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